マンション大規模修繕 見積チェッカー

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マンション大規模修繕のQ&A

管理組合の理事会からよく出る疑問に、公的統計を出典として回答します。 出典は国土交通省「令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(200社818件)ほかです。 回答はすべて目安であり、個別の見積の適否を判断するものではありません。

費用・金額 見積の読み方 時期・周期 発注・業者選び 資金・積立金 診断ツールについて

費用・金額について

大規模修繕の費用相場はいくらですか。
戸あたりでみるのが一般的です。全国818件の分布では「100万円超〜125万円/戸」が27.0%で最多、次いで「75万円超〜100万円/戸」が24.7%でした。中央値は1回目110.2万円/戸、2回目106.1万円/戸、3回目以上97.0万円/戸です。ただしこの調査の対象工事は2018〜2021年度の施工なので、現在の価格に読み替えるには時点補正が必要です。
なぜ「平均」ではなく「中央値」を見るのですか。
1回目の平均値は151.6万円/戸ですが、中央値は110.2万円/戸で40万円以上の開きがあります。超高層マンションなど一部の高額工事が平均を押し上げているためです。平均値を基準にすると多くのマンションが実態より「安い」ように見えてしまうため、本サイトは中央値と四分位(下位25%・上位25%)を使っています。
2026年の見積を、2018〜2021年の調査と比べても意味がありますか。
そのままでは比べられません。国土交通省の建設工事費デフレーター「建築補修」は2020年度を100として2025年度が123.0(暫定値)で、調査対象年度の平均100.4に対しておよそ1.23倍です。なお同じ倍率は別の統計でも確認できます。大規模修繕の主要3工種(とび工・防水工・塗装工)の公共工事設計労務単価を工事費の構成比で加重すると、令和3年3月適用から令和8年3月適用までで約1.25倍でした。性格の異なる2つの公的統計がほぼ同じ倍率を示しています。
地域によって金額は変わりますか。
変わります。ただし変わるのは主に労務費で、材料費や仮設材のリース費に地域差はほとんどありません。公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)の3工種を加重すると、全国平均を1.000として東京都1.176・千葉県1.147・沖縄県1.145が高い側、島根県0.891・山口県0.904・愛媛県0.907が低い側です。
1回目より3回目のほうが安いのはなぜですか。
中央値は1回目110.2万円/戸、3回目以上97.0万円/戸と下がります。工事内訳をみると、回数が増えるほど仮設工事の割合が下がり(1回目25.3%→3回目以上19.4%)、建築系工事の割合が上がります(58.8%→63.6%)。回数を重ねるごとに工事の進め方が効率化していることがうかがえます。
戸あたりではなく床面積あたりで見ることもできますか。
できます。住戸が広いマンションと狭いマンションでは同じ戸数でも工事量が違うため、補助的に有効です。全体では1.0〜1.5万円/㎡が33.4%で最多、中央値は1回目1.1・2回目1.3・3回目以上1.2万円/㎡です。ただしこの項目は調査の無回答が20.5%と多く、戸あたり金額より参考度は下がります。

見積の読み方について

見積書を国土交通省の数値とそのまま比べてよいですか。
いけません。調査における「工事金額」は各工事の直接工事費と諸経費のみで、共通仮設費を含まず、消費税相当額も含みません。手元の見積書は通常どちらも含まれているため、そのまま比べると妥当な見積でも相場より高い数字が出ます。比較の前に、見積総額から消費税と共通仮設費を差し引いてください。
共通仮設費と足場は違うものですか。
違います。足場・養生シートなどは「直接仮設」で、その工事を施工するために直接必要なものです。一方「共通仮設費」は現場事務所・仮設トイレ・仮設電気水道・資材置場など、工事全体に共通してかかる費用で、特定の工種に紐づきません。国土交通省の調査金額に含まれないのは後者です。
工事内訳の全国平均を教えてください。
総工事金額に対しては、建築系工事60.3%、仮設工事22.8%、諸経費①9.5%、その他3.8%、設備系工事1.6%、外構・付属施設1.3%、諸経費②0.8%です。建築系工事のなかでは外壁塗装24.5%、床防水18.6%、屋根防水13.4%、外壁タイル12.9%、シーリング工事12.0%、鉄部等塗装7.4%、建具・金物等7.4%、共用内部3.7%となっています。
「一式」と書かれた見積は問題がありますか。
金額の妥当性を検証できず、複数社の比較にもなりません。比較可能な見積書には、工種ごとに数量(㎡・m・架面積)、単価、仕様(材料・工法・塗り回数)の3つが記載されています。一式表記が多い見積を受け取った場合は、内訳明細の提出を依頼するのが最初の一歩です。
下地補修の数量が「仮」になっています。問題ありませんか。
問題ありません。外壁のひび割れ、モルタルの浮き、タイルの剥離といった下地補修は、足場を架けて全面を打診調査して初めて実数が分かるため、着工前に全数を確定できません。実務では仮の数量で見積り、施工後に実測値で精算するのが一般的です。確認すべきは金額そのものではなく、精算のルールが契約書または見積条件書に明記されているかです。
仮設工事が総額の30%あります。高すぎませんか。
全国平均は22.8%(1回目は25.3%)なので平均より高い水準です。ただし高層マンションで特殊な足場が必要な場合、敷地に余裕がなく資材置場や動線の確保に費用がかかる場合、工期が長い場合などは正当に高くなります。足場の種類・架面積・設置期間の根拠を確認したうえで判断してください。

時期・周期について

大規模修繕は何年ごとに行うものですか。
実態としては13年が最も多く23.1%、次いで12年18.8%、14年15.4%、15年11.1%で、全体の約7割が12〜15年周期です。「12年ごと」という説明が広まっていますが、統計上の最頻値は13年です。
回数によって周期は変わりますか。
変わります。工事回数別の平均周期は1回目15.6年、2回目14.0年、3回目12.9年で、回数が増えるほど短くなります。「前回から13年経ったから次も13年後」ではなく、回数が進むほど早く訪れる前提で長期修繕計画を見直す必要があります。
築何年で1回目を行うのが普通ですか。
実施時点の築年数は、1回目が中央値15年(下位25%が14年・上位25%が18年)、2回目が中央値28年、3回目以上が中央値40年です。分布では1回目は築15年以下での実施が51.6%と半数を超えます。
周期を延ばして積立金の負担を減らせますか。
間隔は空きますが、劣化が進んだ状態で工事を行うことになるため、下地補修の数量が増えて1回あたりの金額が上がる可能性があります。総額として得になるとは限りません。延伸した場合に増える工事項目と概算額を、設計コンサルタントや施工会社に試算してもらうのが確実です。なお実際の工事時期を決めるのは築年数ではなく建物の劣化状況です。

発注・業者選びについて

設計・監理方式と責任施工方式のどちらが多いですか。
全国では設計・監理方式が80.1%、責任施工方式が12.6%です。設計・監理方式は設計する者と施工する者が分かれるため、見積を検証する第三者が存在します。責任施工方式は窓口が一本化されて管理組合の負担が軽い反面、見積を検証する第三者が構造上いません。
小規模マンションでも設計・監理方式にすべきですか。
20戸以下でも48.0%は設計・監理方式を採用していますが、責任施工方式が44.0%と全体平均12.6%の3倍以上になります。設計監理料が戸あたりでは重くなるためです。責任施工方式を選ぶ場合は、複数社の見積を同一条件で取る、公的な無料相談窓口を使うなど、別の形で検証の目を確保することをおすすめします。
設計コンサルタントは何をしてくれますか。
業務量の内訳は工事監理47.9%、設計24.3%、調査・診断15.0%、施工会社選定への協力9.1%、長期修繕計画の見直し2.2%です。約半分は工事が始まってからの現場確認に費やされます。委託を検討する際は、契約に工事監理が含まれているか、監理の頻度や報告方法はどうなっているかを確認してください。
検討から完了までどれくらいかかりますか。
設計コンサルタント業務の実施期間は全体の中央値が21ヶ月で、分布では「1年半〜2年」が最多です。つまり調査診断から工事完了まで2年近くを見込む必要があります。理事の任期が1〜2年の管理組合では複数期にまたがるため、引き継ぎの体制をあらかじめ決めておくと検討が途中で止まりません。
施工業者はどう選ばれていますか。
見積合わせ方式(条件提示型)が61.6%で最多、次いで競争入札方式(総合評価型)17.6%です。3回目以上になると総合評価型が30.5%まで上がり、経験を重ねた管理組合ほど価格のみの比較から離れる傾向がみられます。
見積書を無料で専門家に見てもらえる窓口はありますか。
あります。国土交通大臣が指定する公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)の「リフォーム見積チェックサービス」が無料で、マンションの大規模修繕も対象です。ただし契約前・着工前のみ、電話回答、予約制で最長60分、大規模修繕の場合は図面から個々に数量の確認は行わないという制限があります。03-3556-5147(平日10:00〜17:00)。

資金・積立金について

修繕積立金の目安はいくらですか。
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定・366事例)では、専有面積あたりの月額で示されています。20階未満は延床5,000㎡未満が335円/㎡・月(事例の3分の2が235〜430円)、5,000〜10,000㎡未満が252円(170〜320円)、10,000〜20,000㎡未満が271円(200〜330円)、20,000㎡以上が255円(190〜325円)。20階以上は338円(240〜410円)です。
目安を下回っていたら問題ですか。
ガイドライン自身が「修繕積立金の額が『目安』の範囲に収まっていないからといって、直ちに不適切であると判断される訳ではありません」と明記しています。また、この目安は計画期間全体で均した平均額です。段階増額積立方式を採っていれば、現在の月額が目安を下回っていても計画期間の平均では収まることがあります。長期修繕計画書で計画期間全体の平均額を確認してください。
機械式駐車場があると積立金はどう変わりますか。
上記の目安に加算します。1台あたり月額の修繕工事費は、2段(ピット1段)昇降式6,450円、3段(ピット2段)昇降式5,840円、3段(ピット1段)昇降横行式7,210円、4段(ピット2段)昇降横行式6,235円、エレベーター方式・垂直循環方式4,645円、その他5,235円です。これに台数を掛け、総専有床面積で割ります。ただし駐車場使用料収入で賄う経理としている場合は加算不要です。
長期修繕計画の金額と実際の見積が合いません。
近年の工事費上昇が計画に反映されていない可能性があります。建設工事費デフレーター「建築補修」は2020年度を100として2025年度が123.0(暫定値)です。数年前に作成された計画のままでは想定額と実勢が乖離します。大規模修繕の検討に着手するタイミングは、長期修繕計画を見直す好機でもあります。

診断ツールについて

入力した見積の内容は外部に送信されますか。
送信されません。総戸数・工事金額・工種別の内訳など入力された内容は、すべてお使いの端末のブラウザ内だけで計算されます。当社のサーバーにも第三者のサーバーにも送られず、当社が内容を知ることはできません。会員登録も不要です。
診断結果は「この見積は適正」と判定してくれますか。
判定しません。本サイトが示すのは全国の分布のなかでどのあたりに位置するかと、総会・理事会で確認すべき論点です。「高い」「安い」「割高」といった評価や、談合・水増しの断定は行いません。分布の上寄り・下寄りにあること自体は問題を意味せず、工事範囲・仕様・建物条件による正当な理由があり得るためです。
診断結果を総会の資料に使ってよいですか。
議論のたたき台としてお使いいただくことを想定して印刷機能を用意しています。ただし本サイトの診断結果のみを根拠に議決しないでください。発注先の決定や金額の承認は、建物診断の結果、複数社の見積比較、専門家の意見を含めて管理組合のご判断で行ってください。配布資料に用いる場合は、目安であることと出典を併記してください。

疑問が解けたら、実際の見積が分布のどこに位置するか確認してみてください。

見積の位置を確認する
本ページの数値は出典元をそのまま引用したものですが、掲載内容は情報提供を目的とした目安であり、 個別の見積・マンションの適否を判断するものではありません。

くわしく知りたい方へ

出典
・国土交通省「令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(2022年6月公表・200社818件) 報告書(PDF)
・国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定・366事例) PDF
・国土交通省「建設工事費デフレーター(2020年度基準)」建築補修/「公共工事設計労務単価」(令和8年3月適用)
・公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル) リフォーム見積チェックサービス