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大規模修繕の見積比較の手順
複数社から見積を取っても、条件が揃っていなければ比較になりません。 A社が屋上防水を含み、B社が含んでいなければ、金額差は単に工事範囲の差です。 このページでは、比較できる見積にするための条件と、 実際の進め方、そして無料で使える公的な相談窓口を整理します。
施工業者の選定方法の全国分布
| 選定方法 | 全体 | 1回目 | 2回目 | 3回目以上 |
|---|---|---|---|---|
| 見積合わせ方式(条件提示型) | 61.6% | 66.3% | 64.3% | 53.9% |
| 競争入札方式(総合評価型) | 17.6% | 12.1% | 13.1% | 30.5% |
| 指名競争入札方式(価格競争型) | 4.3% | 5.8% | 3.5% | 3.3% |
| 見積合わせ方式(提案型) | 3.8% | 2.6% | 3.5% | 5.8% |
| 一般競争入札方式(価格競争型) | 3.4% | 3.7% | 3.5% | 2.9% |
| 特命随意契約方式 | 2.1% | 2.0% | 3.0% | 1.2% |
n=818(その他・不明・無回答を除いて掲載)
最も多いのは見積合わせ方式(条件提示型)で61.6%です。 これは発注者側が工事条件を提示し、その条件のもとで各社に見積を出させる方式で、 条件が揃うため比較しやすいという特徴があります。
注目すべきは、3回目以上になると競争入札方式(総合評価型)が30.5%まで上がることです。 総合評価型は価格だけでなく技術力や提案内容も含めて評価する方式です。 経験を重ねた管理組合ほど、価格のみの比較から離れていく傾向が読み取れます。
比較できる見積にするための5つの条件
複数社に見積を依頼する前に、次の5点を揃えておきます。揃っていないまま集めた見積は、 金額を並べても意味のある比較になりません。
1. 工事範囲を文書で確定する
どの部位に何の工事を行うか(屋上防水・外壁塗装・シーリング打替え・鉄部塗装・床防水・建具など)を リストにして全社に同じものを渡します。含めるか迷う項目は「含む/含まない」を明示します。
2. 数量を発注者側で示す
外壁面積、シーリング延長、足場架面積などを設計図書から拾い、発注者側の数量として提示します。 各社が独自に数量を拾うと、金額差が単価の差なのか数量の差なのか判別できなくなります。
3. 仕様のグレードを揃える
塗料のグレード(シリコン系・フッ素系など)や防水工法(ウレタン塗膜・塩ビシートなど)で 金額は大きく変わります。「同等以上」とだけ書くと各社の解釈が分かれるため、 基準となる製品名や規格を指定するか、想定する耐用年数を明示します。
4. 下地補修の想定数量と精算方法を統一する
下地補修は着工前に全数を確定できません。全社に同じ想定数量を提示し、 実測との差額をどう精算するかのルールも同一にします。ここが揃っていないと、 想定数量を低く置いた会社の見積だけが安く見えます。
5. 見積書の様式を指定する
工種ごとに「数量・単位・単価・金額」を記載する様式を指定します。 「一式」表記を認めると比較できなくなるため、様式の段階で防ぎます。 共通仮設費と諸経費も独立した行として計上するよう求めます。
比較の進め方
- 建物診断を実施する……劣化状況を把握し、工事範囲を決める根拠を作ります。
- 工事範囲・数量・仕様を確定する……上の5条件を文書にまとめます。
- 複数社に同一条件で依頼する……見積合わせ方式(条件提示型)の形です。
- 総額でなく工種ごとに並べる……表計算ソフトで工種を行、会社を列にして単価を比べます。
- 外れている項目の理由を各社に確認する……安い理由・高い理由の両方を聞きます。
- 金額以外の条件を確認する……工期、保証年数、瑕疵保険の付保、監理体制、実績。
最安値の見積が最良とは限りません。必要な工事が範囲から外れている、 下地補修の想定数量が低く置かれている、材料のグレードが低い、といった理由で安くなっている場合、 工事中の増額や次回工事の前倒しという形で後から差が出ます。
高い見積と同じくらい、安い見積にも理由の確認が必要です。
無料で使える公的な相談窓口
国土交通大臣が指定する公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)が、 リフォーム見積チェックサービスを無料で提供しています。マンションの大規模修繕工事も対象です。
| 費用 | 無料 |
|---|---|
| 対象 | これからリフォーム工事の契約を予定している消費者。着工前・契約前が対象 |
| 相談方法 | 電話のみ。予約制(ウェブまたは電話で申込) |
| 相談時間 | 指定した時間を開始時刻として最長60分 |
| 電話番号 | 03-3556-5147(電話受付 10:00〜17:00/土日祝休日・年末年始を除く) |
利用にあたっての制限があります。事前にご確認ください。
- 大規模修繕工事の場合、図面から個々に数量の確認は行いません
- 契約後・着工後は対象外です
- 施工業者等とトラブルが起きている場合は利用できません
- 査定・鑑定、維持・管理、設計・監理といった業務は対象外です
つまりこのサービスは、契約前の段階で、見積書の項目立てや形式、一般的な相場との比較について 建築士の意見を聞けるものです。数量の妥当性まで見てもらえるわけではないため、 数量の検証は発注者側または設計コンサルタントで行う必要があります。
それでも、契約前に第三者の専門家の見解を無料で得られる制度は限られています。 特に責任施工方式を検討している管理組合や、設計コンサルタントを置かない小規模マンションでは、 検証の目を入れる有力な選択肢になります。
相談の前に、見積が全国分布のどこに位置するかを把握しておくと、確認したい点が具体的になります。
見積の位置を確認するよくある質問
- 何社から見積を取ればよいですか。
- 実態調査では社数までは集計されていません。ただし選定方法として見積合わせ方式(条件提示型)が61.6%を占めており、複数社から取ることが一般的です。社数を増やすほど比較材料は増えますが、同一条件での依頼と各社への対応の手間も増えます。条件を揃えたうえで実質的な比較ができる範囲に絞るのが現実的です。
- 各社で工事範囲が違う見積が集まってしまいました。
- そのままでは比較できません。共通する工種だけを抜き出して単価を比べたうえで、範囲の差分を別に整理してください。次回以降は、工事範囲と数量を発注者側から提示する形(見積合わせ方式の条件提示型)に切り替えることをおすすめします。
- 相見積もりを取れば適正価格が分かりますか。
- 相互の高低は分かりますが、全社が同水準で見積もっている可能性は排除できません。相見積もりによる相対比較と、全国分布での位置づけの確認は、性質の異なる検証です。両方を行うことで死角が減ります。
- すでに契約してしまいました。何ができますか。
- 住まいるダイヤルの見積チェックサービスは契約前が対象のため利用できません。契約後は、契約書と見積書の内容に沿って工事が行われているかの確認が中心になります。下地補修の実測精算のルール、追加工事の合意手順、工事監理の報告内容を確認してください。トラブルが生じている場合は、住まいるダイヤルの住宅相談や、お住まいの自治体のマンション管理相談窓口が相談先になります。
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