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大規模修繕の見積内訳の見方
総額だけを見ても、その見積が何にいくら使っているのかは分かりません。 国土交通省の実態調査は工事金額の構成比まで集計しているため、手元の見積書と突き合わせれば 「どの項目が全国平均から外れているか」を確認できます。総額が平均的でも、内訳の偏りから論点が見えることがあります。
総工事金額の内訳
| 区分 | 全体 | 1回目 | 2回目 | 3回目以上 |
|---|---|---|---|---|
| 建築系工事 | 60.3% | 58.8% | 59.0% | 63.6% |
| 仮設工事 | 22.8% | 25.3% | 22.3% | 19.4% |
| 諸経費① | 9.5% | 9.6% | 9.3% | 9.4% |
| その他 | 3.8% | 3.2% | 6.2% | 3.0% |
| 設備系工事 | 1.6% | 1.3% | 1.4% | 2.2% |
| 外構・付属施設 | 1.3% | 1.2% | 1.6% | 1.2% |
| 諸経費② | 0.8% | 0.6% | 0.6% | 1.3% |
諸経費①=現場管理費・一般管理費・法定福利費等/諸経費②=大規模修繕瑕疵保険の保険料
まず押さえておきたいのは、仮設工事が総額の約23%を占めるという点です。 足場は「工事の準備」という印象を持たれがちですが、金額上は建築系工事に次ぐ第2の項目です。 仮設の仕様や設置期間は、総額に対して無視できない影響を持ちます。
また、工事回数が増えるほど仮設工事の割合が下がり(25.3%→22.3%→19.4%)、建築系工事の割合が上がる 傾向が読み取れます。設備系工事の割合も1.3%→1.4%→2.2%と上昇します。築年数が進むにつれて 設備の更新需要が出てくることの表れといえます。
建築系工事の内訳
建築系工事の合計を100とした場合の内訳です(全体)。
| 工事 | 建築系工事に占める割合 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 24.5% |
| 床防水 | 18.6% |
| 屋根防水 | 13.4% |
| 外壁タイル | 12.9% |
| シーリング工事 | 12.0% |
| 鉄部等塗装 | 7.4% |
| 建具・金物等 | 7.4% |
| 共用内部 | 3.7% |
まとめると、外壁関係(外壁塗装+外壁タイル+シーリング)で49.4%、 防水関係(屋根防水+床防水)で32.0%となり、この2グループで建築系の8割を占めます。 逆にいえば、見積の建築系部分でこの2つの比率が大きく崩れている場合は、 工事範囲の設定に何らかの特徴があるということです。良し悪しではなく、理由を確認すべき箇所です。
共通仮設費と直接仮設(足場)は別のものです
見積書を読むうえで混同しやすいのがこの2つです。
- 直接仮設……足場、養生シート、朝顔など、その工事を施工するために直接必要な仮設物。上表の「仮設工事」の主要部分です。
- 共通仮設費……現場事務所、仮設トイレ、仮設電気・水道、資材置場など、工事全体に共通してかかる費用。特定の工種に紐づきません。
実態調査の工事金額は「直接工事費および諸経費①②」であり、共通仮設費は含まず、消費税相当額も含みません。 手元の見積書と比較するときは、共通仮設費と消費税を差し引いてから突き合わせてください。 この調整をしないと、妥当な見積でも相場より高い数字が出ます。
なお、共通仮設費が独立した行として立っていない見積書もあります。その場合は諸経費や工事一式のなかに 含まれている可能性があるため、「共通仮設費に相当する費用はどこにいくら入っているか」を確認してください。
「一式」表記の見積は比較できません
「外壁補修工事 一式 ◯◯円」という書き方の見積書は、金額の妥当性を検証できません。 検証できないだけでなく、複数社の見積を横に並べても比較になりません。
比較可能な見積書には、少なくとも次の3つが工種ごとに記載されています。
- 数量(外壁塗装なら㎡、シーリングならm、足場なら架面積㎡)
- 単価(数量あたりの金額)
- 仕様(使用する材料・工法・塗り回数)
この3つが揃っていれば、「数量が図面と合っているか」「単価が他社と比べてどうか」「仕様が過剰または過少でないか」 を分けて検討できます。一式表記が多い見積を受け取った場合は、内訳明細の提出を依頼するのが最初の一歩です。
下地補修は数量が確定できない工事です
外壁のひび割れ、モルタルの浮き、タイルの剥離といった下地補修は、着工前の調査で全数を把握することが 原理的にできません。足場を架けて全面を打診調査して初めて実数が分かるためです。
そのため実務では、見積時点では仮の数量(想定数量)を計上し、 施工後に実測値で精算する扱いが一般的です。ここで確認しておくべきは金額そのものではなく、次の点です。
- 仮の数量はどのような根拠で置いたのか(事前調査の結果か、経験値か)
- 実測との差額はどう精算するのか(単価契約か、都度協議か)
- 精算のルールが契約書または見積条件書に明記されているか
- 上限(増額の限度)を設ける余地があるか
このルールが曖昧なまま契約すると、工事中の増額要求に対して管理組合側が判断材料を持てません。 総会での議決額を超える可能性もあるため、事前の確認が重要です。
長期修繕計画の割合とは別物です
インターネット上には「大規模修繕の工事費割合」として、外壁塗装等13.6%、仮設工事9.0%といった数字を 掲載しているページもあります。これは国土交通省の修繕積立金ガイドラインに載っている、 長期修繕計画(30年など)全体を19項目に分けた割合です。
長期修繕計画には給水設備・排水設備・昇降機設備といった、大規模修繕とは別のタイミングで実施する工事も 含まれるため、大規模修繕1回分の内訳とは意味が異なります。混同しないようご注意ください。 本ページで扱っているのは、大規模修繕1回分の内訳です。
工種別の内訳を入力すると、構成比が全国平均からどれだけ離れているかを確認できます。
見積の位置を確認するよくある質問
- 仮設工事が総額の30%を占めています。高すぎませんか。
- 全国平均は22.8%(1回目は25.3%)なので、平均より高い水準です。ただし高くなる理由はあります。高層マンションで特殊な足場が必要な場合、敷地に余裕がなく資材置場や動線の確保に費用がかかる場合、工期が長い場合などです。足場の種類・架面積・設置期間の根拠を確認したうえで判断してください。
- 外壁タイルの比率が全国平均より大幅に高いです。
- 建築系工事に占める外壁タイルの全国平均は12.9%です。タイル張りの面積が大きい建物では当然高くなります。確認すべきは比率そのものではなく、タイルの補修数量(張替え枚数・注入本数)がどう算出されたか、そして実測精算のルールがあるかです。
- 設備系工事が見積に入っていません。問題ですか。
- 全国平均でも設備系工事は総額の1.6%と小さく、大規模修繕と同時に実施しない管理組合が多数です。設備は劣化状況に応じて別のタイミングで工事することが一般的で、入っていないこと自体は問題ではありません。長期修繕計画上いつ実施する予定かを確認しておけば十分です。
- 諸経費が総額の15%あります。相場はどれくらいですか。
- 調査では諸経費①(現場管理費・一般管理費・法定福利費等)が9.5%、諸経費②(大規模修繕瑕疵保険の保険料)が0.8%です。合計10.3%が全国平均になります。ただし諸経費に何を含めるかは会社によって異なるため、内訳の定義を確認せずに比率だけで判断するのは適切ではありません。
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