マンション大規模修繕 見積チェッカー

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マンション大規模修繕の費用相場

大規模修繕は十数年に一度しか発生しないため、理事会に経験が蓄積しません。「この金額は妥当なのか」を判断する手がかりとして、 国土交通省が全国818件の工事を集計した令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査の数値を、 そのまま引用して整理します。あわせて、調査の金額と手元の見積書は前提が違うという重要な注意点も説明します。

戸あたり工事金額の全国分布

最も使いやすい指標が「工事金額 ÷ 総戸数」です。全国818件の分布は次のとおりです。

戸あたり工事金額割合
25万円/戸以下2.1%
25万円超〜50万円/戸3.5%
50万円超〜75万円/戸9.5%
75万円超〜100万円/戸24.7%
100万円超〜125万円/戸27.0%
125万円超〜150万円/戸17.4%
150万円超〜175万円/戸6.8%
175万円超〜200万円/戸2.3%
200万円/戸超2.8%
無回答3.8%

最も多いのは100万円超〜125万円/戸で27.0%、次いで75万円超〜100万円/戸が24.7%です。 この2区分だけで全体の約半数を占めます。

工事回数によって相場は変わる

1回目・2回目・3回目以上で金額の水準は明確に違います。回数を確認せずに一つの「相場」を当てはめると判断を誤ります。

工事回数件数下位25%中央値上位25%平均値
1回目33190.9110.2134.0151.6
2回目19487.8106.1129.8112.4
3回目以上24276.897.0125.7106.1

単位:万円/戸

「平均値」ではなく「中央値」で見る

1回目の平均値は151.6万円/戸ですが、中央値は110.2万円/戸です。40万円以上の開きがあります。 これは、超高層マンションなど一部の高額な工事が平均を引き上げているためです。 自分のマンションの位置を知りたい場合、参照すべきは中央値と四分位(下位25%・上位25%)です。 平均値を基準にすると、多くのマンションが実態より「安い」ように見えてしまいます。

総工事金額でみた場合

工事回数下位25%中央値上位25%平均値
1回目4,943.88,665.019,825.015,237.4
2回目4,858.57,660.013,806.811,702.7
3回目以上5,753.08,703.016,785.014,758.6

単位:万円

総額の最頻区分は、1回目が4,000〜6,000万円、2回目・3回目以上が6,000〜8,000万円です。 ただし総額はマンションの規模に完全に依存するため、他マンションと比べる用途にはほとんど使えません。 比較には戸あたり、または次の床面積あたりを使ってください。

床面積あたりでみた場合

住戸が広いマンションと狭いマンションでは、同じ戸数でも工事量が違います。 戸あたり金額に違和感がある場合は、床面積(㎡)あたりも確認します。

工事回数件数下位25%中央値上位25%
1回目2970.91.11.4
2回目1811.11.31.6
3回目以上1550.91.21.7

単位:万円/㎡

全体では1.0〜1.5万円/㎡が33.4%で最多です。 ただしこの項目は調査の無回答が20.5%と多く、戸あたり金額に比べると参考度は下がります。補助的な確認に使ってください。

最重要:調査の金額には共通仮設費と消費税が含まれていません
国土交通省の調査における「工事金額」は、各工事の直接工事費と諸経費のみで、 共通仮設費は含まず、消費税相当額も含みません。 一方、管理組合の手元にある見積書は、通常どちらも含まれた金額です。

このまま突き合わせると、妥当な見積であっても相場より高い数字が出ます。 比較する前に、見積総額から消費税と共通仮設費を差し引いてください。

なお、諸経費として集計されているのは「現場管理費・一般管理費・法定福利費等」(諸経費①)と 「大規模修繕瑕疵保険の保険料」(諸経費②)です。この2項目は令和3年度調査から追加されたため、 それ以前の調査結果とは金額を直接比較できません。インターネット上には旧調査(平成29年度・944件)の数値を そのまま掲載しているページもあるため、出典の年度をご確認ください。

2026年時点の金額として読み替える

この調査の対象工事は、おおむね2018〜2021年度に施工されたものです。 その後の資材価格・労務費の上昇を考慮せずに当てはめると、現在の見積は実態より高く見えます。

時点の補正

国土交通省の建設工事費デフレーター「建築補修」(2020年度=100)は、 2018年度97.6/2019年度100.0/2020年度100.0/2021年度104.1に対し、2025年度は123.0(暫定値)です。 調査対象年度の平均を100.4とすると、およそ1.23倍になります。

別の資料でも確認できます。大規模修繕の主要3工種であるとび工・防水工・塗装工の 公共工事設計労務単価を工事費の構成比で加重すると、令和3年3月適用から令和8年3月適用までの全国平均は約1.25倍です。 性格の異なる2つの公的統計がほぼ同じ倍率を示しているため、この水準は比較的信頼できます。

地域の差

工事費のうち材料費や仮設材のリース費に地域差はほとんどありませんが、労務費には地域差があります。 公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)の3工種を加重すると、全国平均を1.000として 東京都1.176・千葉県1.147・沖縄県1.145が高い側、島根県0.891・山口県0.904・愛媛県0.907が低い側です。

つまり2026年の東京都で1回目の大規模修繕であれば、110.2万円/戸 × 1.23 × 1.176 = 約159万円/戸が 中央値の目安ということになります。ただしこの地域補正は労務費の地域差を工事費全体に当てはめたものなので、 実際より大きめに出る点にご留意ください。

戸数と見積金額を入れるだけで、上の分布のどこに位置するかを確認できます。
共通仮設費と消費税の調整も自動で行います。

無料で位置を確認する

よくある質問

戸あたり150万円は高すぎますか。
1回目であれば上位25%(134.0万円/戸)を超える水準ですが、これは2018〜2021年度の価格です。時点補正を掛けると上位25%は約165万円/戸になるため、150万円/戸は分布の中に収まります。金額だけで高い・安いは判断できません。タイル面積が大きい、高層で足場が特殊、給排水設備の更新を同時に行うなど、金額が上がる正当な理由があるかどうかが要点です。
1回目より3回目のほうが安いのはなぜですか。
調査では中央値が1回目110.2万円/戸、3回目以上97.0万円/戸と下がっています。工事内訳をみると、回数が増えるほど仮設工事の割合が下がり(1回目25.3%→3回目以上19.4%)、建築系工事の割合が上がります。工事の進め方が回数を重ねるごとに効率化していることがうかがえます。
相見積もりを取れば相場は分かりますか。
複数社の見積を比べれば相対的な高低は分かりますが、全社が同じ水準で見積もっている可能性は排除できません。全国分布での位置づけと、社内での相互比較は、性質の違う確認です。両方を行うことをおすすめします。
調査に含まれない工事はありますか。
耐震改修工事は調査の対象外です。耐震改修を含む見積は、その分を除いてから比較してください。また対象は計画修繕とグレードアップのための改修工事で、建築系・設備系・外構や仮設を含みます。
本ページの数値は出典元をそのまま引用したものですが、掲載内容は情報提供を目的とした目安であり、 個別の見積の適否を判断するものではありません。マンションの劣化状況・仕様・工事範囲によって適正な金額は大きく変わります。

関連ページ

出典
・国土交通省「令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(2022年6月公表・200社818件) 報告書(PDF)掲載元ページ
・国土交通省「建設工事費デフレーター(2020年度基準)」建築補修 統計ページ
・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(2026年2月17日公表)