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大規模修繕の発注方式

大規模修繕をどう発注するかは、見積の妥当性を検証できるかどうかに直結します。 設計と施工を分けるのか、まとめて1社に任せるのか。国土交通省の実態調査によれば、 全国では設計・監理方式が80.1%と圧倒的多数ですが、 20戸以下のマンションでは責任施工方式が44.0%と様相が大きく変わります。

主な発注方式

設計・監理方式

建築士を有する建築設計事務所・建設会社・管理会社等を選定し、合意形成までの段階では 調査診断・改修設計・施工会社の選定・資金計画等に係る専門的、技術的、実務的な業務を委託し、 工事実施段階では工事監理を委託する方式です。設計する者と施工する者が分かれるため、 施工内容と金額を第三者が検証する立場の人がいるのが特徴です。

責任施工方式

建築士を有する施工会社(設計・施工・監理部門を有する建設会社や管理会社等)を選定し、 調査診断・改修設計・資金計画から工事の実施までの全てを請け負わせる方式です。 窓口が一本化されるため管理組合の負担は軽く、設計監理料も別途は発生しません。 一方で、見積を検証する第三者が構造上いないという性質があります。

CM方式

コンストラクションマネージャー(CMR)と呼ばれる専門家が、技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、 設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、 コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行う方式です。

ECI方式

設計段階より施工者の技術力を設計内容に反映させ、施工の数量・仕様を確定した上で工事契約をする方式です。

全国の採用割合

発注方式全体1回目2回目3回目以上
設計・監理方式80.1%82.4%76.4%82.3%
責任施工方式12.6%10.1%14.6%12.8%
CM方式0.9%0.9%1.5%0.4%
ECI方式0.1%0.3%0.9%0.3%

n=818(その他・不明・無回答を除いて掲載)

工事回数による大きな違いはなく、いずれも設計・監理方式が8割前後を占めます。

戸数が少ないほど責任施工方式が増えます

マンション規模件数設計・監理方式責任施工方式
全体81880.1%12.6%
20戸以下2548.0%44.0%
21〜30戸4665.2%26.1%
31〜50戸13272.7%22.0%
51〜75戸17380.9%10.4%
76〜100戸10487.5%5.8%
101〜150戸11281.3%8.0%
151〜200戸6889.7%5.9%
201〜300戸7288.9%8.3%
301戸以上7885.9%6.4%

20戸以下では責任施工方式が44.0%と、全体平均12.6%の3倍以上になります。 小規模マンションでは設計監理料の負担が戸あたりで重くなること、理事の人数が限られ 発注実務の負担が大きいことなどが背景にあると考えられます。

小規模マンションでは検証の目が入りにくい
責任施工方式そのものに問題があるわけではありません。窓口が一本化され、 管理組合の負担が軽くなるという明確な利点があります。

ただし、設計・見積・施工が同一の会社で完結するため、 その見積を独立した立場で検証する人がいない状態になります。 この方式を採る場合は、複数社から見積を取る、外部の第三者チェックを利用するなど、 検証の手段を別途確保しておくことが重要です。

設計コンサルタントは何をするのか

設計・監理方式では設計コンサルタントに業務を委託します。その業務量の内訳は次のとおりです。

業務全体1回目2回目3回目以上
工事監理47.9%50.6%37.5%56.5%
設計24.3%22.8%29.3%22.2%
調査・診断15.0%15.2%17.6%11.6%
施工会社選定への協力9.1%8.3%13.6%5.9%
長期修繕計画の見直し2.2%2.5%1.8%2.5%
その他1.4%0.7%0.3%1.3%

業務量(人・時間)のウェイト。n=335

業務量の約半分は工事監理です。設計や調査診断だけでなく、工事が始まってからの 現場確認に多くの時間が割かれています。設計コンサルタントへの委託を検討する際は、 契約に工事監理が含まれているか、監理の頻度や報告方法はどうなっているかを確認してください。

業務期間の目安

設計コンサルタント業務の実施期間は、全体の中央値が21ヶ月です (1回目20ヶ月、2回目18ヶ月、3回目以上21ヶ月)。分布としては「1年半〜2年」が最も多くなっています。

つまり、調査診断から工事完了までを設計コンサルタントに委託する場合、 2年近くの期間を見込んでおく必要があります。 理事の任期が1年や2年の管理組合では、複数期にまたがることになります。 引き継ぎの体制をあらかじめ決めておくと、検討が途中で止まるのを防げます。

設計コンサルタントの選び方

選定方法全体
見積合わせ方式53.3%
特命随意契約方式(リピート受託)10.5%
特命随意契約方式(初めての受託)5.8%
その他4.9%

n=572(不明・無回答を除いて掲載)

最も多いのは見積合わせ方式で53.3%です。マンション規模による選定方法の違いはほとんど見られません。 一方、特命随意契約(1社を指名して契約する方式)も合わせて16.3%あります。

設計コンサルタントの選定では、金額だけでなく次の点を確認しておくと判断しやすくなります。

発注方式にかかわらず、見積の金額が全国分布のどこにあるかは確認できます。

見積の位置を確認する

よくある質問

管理会社に一括で任せるのは責任施工方式ですか。
管理会社が建築士を有し、調査診断から工事の実施までを請け負う場合は責任施工方式にあたります。ただし管理会社が設計コンサルタントとして関与し、施工は別会社が行う形であれば設計・監理方式です。契約書上どちらの形になっているかを確認してください。
設計監理料はどれくらいかかりますか。
国土交通省の実態調査では、設計コンサルタント業務の「業務量(人・時間)」と「実施期間」は集計されていますが、料金そのものは公表されていません。業務量の分布と、国土交通省が毎年公表している設計業務委託等技術者単価から概算を組み立てることは可能ですが、契約内容によって幅が大きいため、複数社から見積を取って比較するのが確実です。
責任施工方式では見積が高くなりますか。
実態調査は発注方式別の金額を集計していないため、公的なデータでは確認できません。設計監理料が別途発生しない分だけ総支出が抑えられる面もあり、一概に高い・安いとはいえません。重要なのは方式そのものより、その見積を検証する手段が確保されているかどうかです。
小規模マンションでも設計・監理方式にすべきですか。
20戸以下でも48.0%は設計・監理方式を採用しています。ただし設計監理料が戸あたりでは重くなるため、費用対効果の判断が必要です。責任施工方式を選ぶ場合は、複数社の見積を同一条件で取る、公的な無料相談窓口を使うなど、別の形で検証の目を入れることをおすすめします。
本ページの数値は出典元をそのまま引用したものですが、掲載内容は情報提供を目的とした目安であり、 特定の発注方式や特定の事業者を推奨・評価するものではありません。

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出典
・国土交通省「令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(2022年6月公表・200社818件) 報告書(PDF) (発注方式の定義は同報告書の記載に基づく)